再生医療について

再生医療に用いられる幹細胞

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再生医療に用いられる幹細胞

ヒトを構成する皮膚や血液といった細胞は寿命が短く、絶えず新しい細胞と入れ替わることで組織を維持しています。この新しい細胞を生み出す細胞が幹細胞です。幹細胞は自分と同じ能力を持った細胞を作る自己複製能と、皮膚や血液など目的に応じたさまざまな細胞を作る分化能を併せ持っており、受精から命が尽きるまで、ヒトという生命体を維持するために役立っています。

幹細胞は大きく2種類に分けることができます(図1)。一つは特定の臓器や組織の細胞を補充するための「体性幹細胞(組織幹細胞)」です。組織幹細胞はそれぞれ血液細胞、神経細胞など、どの細胞を作るのか役割が決まっています。もう一つは、どのような細胞でも作ることができる「多能性幹細胞」です。多能性幹細胞は体性幹細胞を作り出すこともできます。

代表的な多能性幹細胞としてES細胞とiPS細胞があります。ES細胞(胚性幹細胞)は受精卵が分裂した胚の内部にある細胞を取り出し培養した細胞で、多能性幹細胞として再生医療への応用が期待されていましたが、受精卵を用いるという倫理的な問題があり、現時点では臨床では使われていません。
iPS細胞は皮膚などの体細胞に、リプログラミング因子を導入することにより、人工的に多能性を持たせた細胞で、ノーベル賞を受賞した山中伸弥氏が開発した細胞です。iPS細胞は体細胞から作製するため、倫理的な問題も生じず、また、患者自身の体細胞から作製すれば拒絶反応も起こらないことから、これからの研究、臨床応用が期待されています。

一方、体性幹細胞は役割が決まっており、また、幹細胞分離が困難なことから、骨髄などに存在する造血幹細胞を除き、以前は臨床治療に用いられることはありませんでした。近年、体性幹細胞のうち、骨髄や脂肪組織に存在する間葉系幹細胞(MSC)が多能性を持つことが明らかとなりました。MSCは、強力な免疫調節作用を有することから、損傷組織、移植、及び自己免疫疾患などへの応用が期待されており(図2)、脱髄性神経障害(多発性硬化症)、全身性エリテマトーデス、クローン病などの免疫性炎症性疾患に対し、実用化に向けた研究が行われています。

図1.幹細胞の種類

図1.幹細胞の種類

日本再生医療協会 幹細胞の種類と特徴 より改変
http://japanrma.org/stem_cell/stem_cell2/(2024/8/15)

図2.免疫性炎症性疾患における間葉系幹細胞(MSC)の検討状況(2016年)

図2.免疫性炎症性疾患における間葉系幹細胞(MSC)の検討状況(2016年)

Wang et al.: J Biomed Sci. 2016; 23(1): 76. より改変

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