クローン病肛門部病変について

内科的治療(薬物療法)

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内科的治療(薬物療法)

クローン病の痔瘻に対する内科的治療としては、排膿後の症状の軽減を目的とした抗菌薬などによる治療と疾患活動性を抑制し症状の軽減を目指す免疫調節剤・生物学的製剤による治療があります。これらの薬物療法は単独では有用ではありませんが、ドレナージなどの外科治療後に行うと症状の軽減や再燃予防効果が期待できます。
抗菌薬は切開排膿後に用いられ、疼痛や排膿などの瘻孔症状の軽減効果が認められています。なかでもメトロニダゾールは小規模の前向き試験において有効性が認められています。
免疫調節剤はチオプリン製剤やシクロスポリン、タクロリムスなどで痔瘻に対する有効性が認められたとする報告があります。ただし、シクロスポリンは長期投与ができない、タクロリムスは血中濃度の維持管理が難しいことなどから痔瘻の治療に使うには一般的ではありません。また、抗菌薬とチオプリン製剤の併用は有効性が高く、欧米では第一選択とされています。
しかしこれらの内科的治療の成績は短期間の検討によるものであり、長期的な有用性については明らかになっていません。実際、オランダのコホート研究では、治療法が大幅に進歩した1991年から2011年で、クローン病に伴う痔瘻の再発率に変化がみられなかったことが報告されています(1)
抗TNFα抗体製剤などの生物学的製剤は手術との併用により効果が期待できる推奨度が高い治療法です。肛門部手術後の再発や人工肛門造設を避けるために発症早期から投与した方がよいとする意見もあります。
なお、クローン病の薬物療法として一般的な5-ASA製剤、ステロイド製剤の痔瘻に対する効果は認められていません。

図.クローン病に伴う痔瘻の再発率の変遷
(海外データ)

クローン病に伴う痔瘻の再発率は、薬物療法の進歩にもかかわらず1991年から2011年の間で有意な変化は認められませんでした。

図.クローン病に伴う痔瘻の再発率の変遷(海外データ)

対象と方法:1991~2011年にかけて、オランダのIBDSLコホートに登録されたクローン患者1,162例を対象に、クローン病と診断された3つの年代(1991~1998年、1999~2005年、2006~2011年)に割り付け、痔瘻及び直腸膣瘻の累積5年再発率を調査した。

Limitation:痔瘻及び直腸腟瘻の診断及び追跡調査に、今日のように画像検査が一般的に用いられていなかった時代では過小評価されていた可能性がある。特定の手術手技に関する詳細なデータが欠如していたため手術手技を直接比較できなかった。

IBDSL:Inflammatory Bowel Disease South-Limburg

Göttgens KW, et al.: Eur J Gastroenterol Hepatol. 2017; 29(5): 595-601.より作図

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